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脊椎脊髄疾患の病態を考えるうえで静的因子のみならず動的因子の関与を念頭に置いておくことは非常に重要で,ましてや,この問題は脊椎脊髄疾患の外科的治療を担う医師にとっては一丁目一番地かもしれません.しかし,本特集内でも紹介されているように脊椎のキネマティックスの解析などはどんどん発展している反面,実際の臨床現場の病態解析では従前のMRIにアクセントが置かれがちで,動的因子はないがしろにされかねない状況です.そもそもMRIは仰臥位での撮影が多いため,頸椎でも腰椎でも後屈位などでの動的変化は捉えにくいことが多く,まして,立位など荷重下での把握も不向きな場合が多いです.このような状況を鑑みますと,われわれ脊椎脊髄外科医はあらためて,動く臓器である脊椎の中にいる脊髄・神経を再認識し,これまで以上に念頭に置きながら臨床に臨むことが望まれると考え,本特集を組んでみました.
まずは内角久明先生に,脊椎の中の脊髄や神経にとっての周囲組織とのインターフェース(固定装置など),さらには,これまであまり注目されていなかった硬膜管の固定装置や脊椎外の軟部組織などの解剖学的および機能的役割を紹介していただきました.続いて,頸椎レベルでは長本行隆先生に頸椎の最新で精緻なキネマティックスのご紹介とその重要性,頸椎のinstantaneous axis of rotationなどのお話,さらに原稿量を増やしていただき,その中の神経組織である脊髄の状態の変化もご紹介いただきました.湯川泰紹先生にも無理なお願いをして二つの原稿にわたって腰椎のアライメント変化および可動域などの詳細な検討のご紹介,および腰椎の中の馬尾のみならず脊髄終糸や脊髄円錐の変化についても,興味深い臨床例も交えながらご紹介いただきました.脊椎から出た末梢神経は,四肢および手足の動きに伴って移動(伸縮)することは広く知られているわけですが,寺尾 亨先生には種々の絞扼性末梢神経疾患について日頃あまり触れることがない動的要素の関係を踏まえながら,実臨床症例を紹介していただきました.
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