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Ⅰ.はじめに
交通事故による頭部外傷は,現在なお多くの人命を奪う社会的にも医療的にも克服すべき大きな問題である.近年,脳圧測定法・脳低温療法など頭部外傷の治療法はめざましい発展を遂げつつあるが5,6,16,18-25),その一方で外傷の種類と受傷のメカニズムの関係は明らかとなっていない12,20,23).この原因の1つは,①医療者は患者の病態や治療については詳しいが,受傷に至った経緯については情報を持たないこと1),②事故の状況を検分し,自動車の損傷状況などの情報を持つ側は医療側の情報を持たないこと9),による.この病院外・内の情報が有機的に蓄積検討されれば,交通事故の際の頭部外傷の受傷の機序の解明のみならず,より安全な身体保護装置の開発などの一助となる.
(財)交通事故総合分析センター(ITARDA:Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis)は交通事故の原因を科学的に究明するため,交通事故統計(マクロ統計)および各事故ごとの運転者,道路交通環境,車両のそれぞれの面について交通事故現場での詳細な調査(ミクロ調査)を行っている3,4,17).筆者らはITARDAにおいて,総合的調査に関する調査分析検討会「人体傷害に関する分科会」委員や特定の事故形態に関する集中的な事故調査・解析委員会人体傷害部会委員会委員として,この両者のギャップを埋めることを主たる目的とし,交通事故時の頭部外傷のメカニズムについて検討を続けてきた3,4,17).本稿では,まずITARDAの活動について概説し,次いで交通事故による頭部外傷の疫学および脳損傷の機序について報告する.
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