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はじめに—Parkinson病200年記念
Parkinson病という疾患名は,臨床神経学の祖であるCharcotによって名づけられたが,その大きな理由はJames Parkinson(1755〜1824)による「振戦麻痺に関するエッセイ」(1817)30)における臨床症状の仔細な記載によると思われる.本年は,この最初の記載から200年の記念式典がロンドンで催されるほか,秋に京都で開催される第23回World Congress of Neurologyにおいて記念シンポジウムが予定されている.
Parkinsonは体幹(脊柱)の姿勢異常について,「さらに,2,3カ月もすると,患者はいつものちゃんとした真っ直ぐの姿勢を保つことがおっくうのようにみえる.これは歩行時に最も顕著であるが,ときには座位または起立位でも認められる」,「体の前屈傾向に打ち勝つことができず,患者は足指と足の前面で歩かざるを得ない状態になるので,上半身はひどく前方に投げ出されるような格好となり,真正面から倒れがちとなる」,「病気が末期に近づくと,躯幹はほとんど前屈位に固定され」「顎は胸骨のあたりまで前屈してほとんど動かない」と経過を追って詳細に具体的に述べている30).さらに,報告された6例のうちの第5例(72歳男性)には「約20年前,激しい腰痛にしばらくの間悩んだ」という記載があり,胸腰椎の変形や圧迫骨折との関連をうかがわせる.
Parkinsonによる原著記載後半世紀経った時期に,Charcotは振戦麻痺の症候学に着眼し,1861年に多発性硬化症と区別すべき疾患として記載し,Parkinsonが述べていなかった筋強剛について触れ,それが四肢筋だけでなく体幹筋にも生じ,体幹の筋強剛が屈筋のほうに強く現れるため,体幹は前屈すると述べている17).1888年には,振戦のない症例の存在や真の運動麻痺のない点などから「振戦麻痺」の病名を不適とし,Parkinson病と呼ぶことを提唱した17).ほぼ同時期のGowersの有名な教科書(1886)にはParkinson病の典型的な立位姿勢の図(図1)が示されており,「体幹は前屈しているが,頸部は体軸に対し伸展している」と記載されている14).Parkinson病における体幹(脊柱)の姿勢異常は旧来から1つの大きな特徴であり,研究テーマとなってきた10).
本稿では,まずParkinson病に自然にあるいは治療の結果として現れる体幹のさまざまな異常姿勢について概説し,次にParkinson病と骨粗鬆症や骨折,転倒との関連について触れ,脊柱変形を理解する一助としたい.
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