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はじめに
Magerl法は,Magerlらによって1987年に発表された環軸関節貫通螺子固定法である6).たった2本の螺子で強力な固定が得られ,術後簡易な外固定で高い骨癒合率が得られる優れた術式で,それまでhalo-vestを用いても安定した成績を獲得できなかった手術治療を一変させた.まさに頸椎インストゥルメンテーション時代の幕開けを告げるものであった.
一方,Magerl法には,それまでの手術ではあまり問題にならなかった,頸椎インストゥルメンテーション手術特有の新しいリスクがあった.螺子による椎骨動脈(vertebral artery:VA)損傷である17).VA損傷は,術中の止血困難な大出血をもたらすだけでなく,止血できても脳虚血や塞栓による脳梗塞を引き起こすことがあり,ときに命に関わる重篤な合併症となる.しかし,その後の研究によって,high riding VAなどVAのバリエーションについて広く認識されるようになり,VA損傷を避けるための螺子経路も明らかになってきた13,14).それと並行して,CT画像の自由な断面を容易に得られるようになったこと,CT血管造影(CTA)が比較的簡単にできるようになったことなどから,個々の患者の螺子経路,VA走行を3次元的に評価することが可能となった.これらの進歩により,この10年間で手術そのものの安全性が飛躍的に向上した.
一方,C1外側塊螺子とC2椎弓根螺子をつないで環軸関節を固定する方法が,1994年にGoelら3)によって提唱され,2001年にHarmsら5)がpolyaxial screwをrodでつなぐ改案(Goel-Harms法)を発表してから急速に普及した.
Magerl法もGoel-Harms法も同等の固定力が得られるとされているが,それぞれに一長一短がある.この稿では,Magerl法の手技とともに,両法の比較,われわれの最近の工夫などについても述べたい.
なお,VA走行を考慮したMagerl螺子経路の基本的な考え方,手術手技の詳細については,今まで何度か執筆してきたので,他稿を参照されたい10〜12).
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