Japanese
English
特集 脊髄血管障害—最新の診断と治療
Bow hunter's strokeと頭位性椎骨動脈閉塞症—その概念と診断・治療
Bow Hunter's Stroke and Positional Vertebral Artery Occlusion:Pathogenesis, Diagnosis and Treatment
竹島 靖浩
1
,
中瀬 裕之
1
Yasuhiro TAKESHIMA
1
,
Hiroyuki NAKASE
1
1奈良県立医科大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Nara Medical University School of Medicine
キーワード:
ボーハンター病(bow hunter's stroke)
,
頭位性閉塞(positional occlusion)
,
椎骨動脈(vertebral artery)
Keyword:
ボーハンター病(bow hunter's stroke)
,
頭位性閉塞(positional occlusion)
,
椎骨動脈(vertebral artery)
pp.1105-1110
発行日 2016年12月25日
Published Date 2016/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200513
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
頭蓋外椎骨動脈には「頸椎を貫通しながら走行する」という特異な解剖学的特徴があり,それゆえ椎骨動脈は頸椎の動的影響を受ける.動的影響を受けても通常は何ら症状を呈さないが,ひとたび病的因子が加わると脳虚血の原因となり得る.
頸椎を貫通する頭蓋外椎骨動脈に動的因子が関わり生じる病態は,1978年にSorensen14)が頭部回旋により脳虚血を呈した症例を“bow hunter's stroke(BHS)”として報告し,以後広く知られるようになった.しかし,本病態を巡っては,それ以前に慢性関節リウマチ関連の環軸椎亜脱臼に伴う椎骨動脈塞栓症の死亡症例の報告6,17)がなされている.また,これらの報告以後も基礎疾患の有無や病因の違い(血行力学的脳虚血か血栓塞栓症か)の要因も加わり多岐に及ぶ疾患定義が提唱されているため,本病態の理解においていまだ混乱を招いている.
本稿では,過去の報告を遡って本病態における定義解釈を再検討し,positional vertebral artery occlusion(PVAO)としてその特徴・診断・治療について概説する.
なお,椎骨動脈起始部の先天的位置異常により頭部回旋時に脳虚血を呈する病態としてPowers症候群が知られているが,脊椎骨との直接の関連性がないため,その詳細については他稿を参照されたい.
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.