Japanese
English
特集 肩こりと後頸部痛の日常臨床
頸部痛に対する保存療法
Conservative Treatments for Neck Pain
神谷 光広
1
,
牛田 享宏
2
Mitsuhiro KAMIYA
1
,
Takahiro USHIDA
2
1愛知医科大学整形外科
2愛知医科大学学際的痛みセンター
1Department of Orthopaedic Surgery, Aichi Medical University
キーワード:
頸部痛(neck pain)
,
保存加療(conservative treatment)
,
集学的治療(multidisciplinary treatment)
Keyword:
頸部痛(neck pain)
,
保存加療(conservative treatment)
,
集学的治療(multidisciplinary treatment)
pp.1033-1039
発行日 2016年11月25日
Published Date 2016/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200495
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はじめに
頸部痛を訴える疾患は,一次性に軸性頸部痛を引き起こすもの(頸椎椎間板障害,頸椎椎間関節症,外傷性頸部症候群〔むち打ち症〕,筋筋膜性疼痛)と,頸部痛に加えて四肢の痛みまたは神経機能障害を引き起こすもの(頸部神経根症と頸椎症性脊髄症)および口腔領域(顎関節機能異常)や肩甲帯,腰背部の病態(不良姿勢など)に起因して頸部に二次性に痛みが出現しているものの3つのグループに分類することができる.本稿では,軸性頸部痛を生じる疾患を中心に概説する.
直接的に急性の頸部痛を生じる生物学的要因として,頸椎椎間関節障害,椎間板障害などによる侵害受容性疼痛,頸神経根障害による神経障害性疼痛が考えられ,それぞれの病態にあわせて,理学療法(運動療法),ブロック治療,薬物療法などが行われる.慢性疼痛となると生物学的要因と心理社会的要因により生じるさまざまな要因が絡み合い,多様な病態を呈するため,多分野からのアプローチが必要となる.一方で,初期治療には一般医家があたることが多い.患者の大半は,痛みの要因に関係なく,保存療法で回復するが,重症または持続性の頸部痛は,しばしば症状と身体検査所見,画像診断所見の乖離があり,治療のためのエビデンスに基づくガイドラインなどが不十分なため治療に難渋する.短時間で効率的な診療が要求される一般医家診療において,その多様な病態に対して,多分野と協力して診療を行うことは困難であり,本稿では痛みセンターでの集学的治療の試みを紹介する.単一の病態としての頸椎症から外傷性頸部症候群(いわゆる「むち打ち症」)まで,多様な病態を呈するさまざまな症例に対する系統的な診断に基づく治療を中心に概説する.
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