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はじめに
肩こりは非常に頻度の高い症状のひとつである.海外においても,“chronic neck and shoulder pain”,“non-specific shoulder pain”,また,単に“neck pain”のように,さまざまな呼び名で報告されてきた.ヨーロッパや北米では,2/3の人々が,一生の中で一度は“neck pain”を経験しているとされる7).本邦においても,肩こりで悩む国民は多く,平成25年厚生労働省国民生活基礎調査によると,肩こりは女性が訴える症状の第1位であり,男性でも第2位である21).肩こりという症状の背景には,各診療科におけるさまざまな身体疾患・症候が存在している可能性が以前から指摘されてきた41).しかし,各診療科における原疾患の診断・治療に関する研究が数多く行われてきた一方で,これまで肩こりという呼び名が診断名でなく,症状名として認識されることが多く,ひとつの症状である肩こりに焦点が当てられることは少なかった.このように多くの人々が自覚している肩こりではあるが,この症状の臨床的特徴や治療指針は,いまだ明らかになっていない.また,肩こりの解剖学的な局在やその定義について記述した報告は数少ない.たとえば,Hurwitzら16)は,上位胸椎から後頭部にわたる領域とその周囲の筋肉組織に生じる痛みとしている.また,Blissら4)は,肩甲帯から上部に起こる不調・不具合と述べている.しかし,これらの報告も,肩こりの定義としては不十分である.さらに,近年まで,欧米諸国で報告されている頸・肩周囲の疼痛と本邦における肩こりが,類似の症状であるか否かについても明らかになっていなかった41).このように,肩こりの病態やその特徴を明らかにするためには,肩こりの症状とその解剖学的な局在を定義・理解することが重要である.
本稿では,まず,肩こりの定義,疫学,病態について整理し,本態性・症候性肩こりの鑑別診断について解説する.
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