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特集 さまざまな基礎疾患・病態を有する症例に対する脊椎固定術
骨粗鬆性椎体骨折後偽関節患者に対する手術戦略—術後生命予後と長期QOLについての検討
Surgical Treatment for Patients with Insufficient Union Following Osteoporotic Vertebral Fractures. Analysis of Long-term Risk of Mortality and Quality of Life
大場 哲郎
1
,
波呂 浩孝
1
Tetsuro OHBA
1
,
Hirotaka HARO
1
1山梨大学大学院総合研究部整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, University of Yamanashi
キーワード:
骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fractures)
,
矯正損失(correction loss)
,
死亡率(mortality)
Keyword:
骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fractures)
,
矯正損失(correction loss)
,
死亡率(mortality)
pp.529-533
発行日 2016年5月25日
Published Date 2016/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200383
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はじめに
高齢化社会を迎え,骨粗鬆症による骨折を治療する機会が急増した.骨粗鬆症性椎体骨折は保存的治療で良好な経過が得られる症例が多いが,一部の症例では高度の椎体圧潰変形や偽関節に陥ることがある.偽関節のリスクファクターとして,後壁損傷や高齢者,軽微な外傷による骨折などが報告されている8).また,骨粗鬆症性椎体骨折のうち遷延治癒になる症例は14%という報告があり5),骨癒合が得られないことにより頑固な背部痛や遅発性の神経障害をきたすため,生活の質は著しく損なわれる2).こうした難治症例に対する外科的治療は,諸家によりさまざまな工夫が報告されているものの,いまだ問題点が多い.骨脆弱性のためinstrumentationによる固定力に限界があり,どの術式においてもある程度のスクリューのルースニングや矯正損失,また固定周囲に近接した新たな続発性椎体骨折を発症する4,6,7,9).また,高齢者に対する手術のために併存症への対応が必要になることが多く,ときによっては手術侵襲が深刻な全身的合併症を起こし得る.そのため,本疾患に対する術式には,良好な脊柱の再建と,高齢者への手術侵襲のバランスが重要である.骨粗鬆症が原因の骨折がその後の患者の生存率にマイナスに影響することが過去に報告されているが1),椎体骨折後偽関節に対して手術を施行された患者の生命予後については報告がない.
本稿では,①当科で骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対して手術を受けた患者の生命予後と,②術後の矯正損失(平均観察期間33カ月)ならびに臨床症状への影響,③矯正損失のリスクファクター,について検討し,文献学的検証を加えて考察した.
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