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特集 椎間板と痛み
椎間板の分子学的基礎研究の現状—新たな分子標的シグナル
Molecular Mechanisms Involved in Intervertebral Disc Degeneration
檜山 明彦
1
,
持田 讓治
1
Akihiko HIYAMA
1
,
Joji MOCHIDA
1
1東海大学医学部外科学系整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Surgical Science, Tokai University School of Medicine
キーワード:
椎間板変性(intervertebral disc degenerarion)
,
Wntシグナル(Wnt signal)
,
腰痛(low back pain)
Keyword:
椎間板変性(intervertebral disc degenerarion)
,
Wntシグナル(Wnt signal)
,
腰痛(low back pain)
pp.41-50
発行日 2015年1月25日
Published Date 2015/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200011
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はじめに
腰痛の生涯罹患率は70〜90%であり,腰痛患者の約7〜10%が慢性化すると報告されている2,4,36).慢性化した痛みは日常生活動作にも支障をきたすことから,先進国においては大きな社会問題の1つである.わが国においても高齢化社会の到来により医療財政は切迫しており,外科治療に至る前段階での治療として,真に有効な疼痛治療薬や椎間板変性抑制治療薬が期待される.
椎間板は円盤状の組織構造を呈しており,ヒトでは荷重や衝撃の吸収や緩衝といった重要な機能を有し,周囲の骨格や靭帯・筋肉とともに脊柱全体の安定性に寄与している.しかしながら,いくつかの要因により,これらの椎間板の安定性や機能が損なわれると椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症や変性側弯症などの脊椎変性疾患が生じる.これら諸病の背景においてトリガーとなるのが,椎間板の変性(椎間板変性)である.ゆえに,椎間板変性の抑制が上記の各病態進行の抑制要素になる可能性がある.
最近では,神経障害性疼痛や慢性腰痛に対して新たな疼痛(腰痛)治療薬であるプレガバリン(リリカ®)やトラマドール/アセトアミノフェン(トラムセット®)を用いた保存治療(疼痛治療)が行われており,新たな治療薬(慢性疼痛)としての有効性が報告されている.
今後も新たな疼痛治療薬の開発を含め,MRIやCTなどの画像診断に代わる簡易なバイオマーカーの発見のために椎間板変性機序を分子レベルで解明し,新規治療薬や診断法の開発の橋渡しになるような基礎研究(トランスレーショナルリサーチ)の進展が期待される.
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