Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
腰痛の罹患率は非常に高く,小児から成人,壮年,高齢者の広い年齢層にわたるcommon diseaseである.特に腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の4〜10%程度の原因とされ,20〜40歳台の活動期に急性発症することが多く,男性に多い.好発部位はL4-5,L5-S椎間である.発症直後には非常に強い腰下肢痛のために体動困難となるが,7割程度の患者は発症から3〜6カ月以内に症状が軽減する23).
両側性の場合もあるが,多くは片側性の臀部から下肢への放散痛を呈し,安静時や腰椎前屈時の疼痛が特徴的である.また,神経学的には,下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)が陽性で,左右差をみる.また,障害神経根に一致した筋力低下や知覚障害,深部腱反射の低下をみる.画像検査はMRIが最も精度が高く,非侵襲的で有意義である.しかし,無症候性の椎間板の膨隆がみられる場合もあり,診断には症状や神経所見を必ず考慮しなければならない23).
多くの症例では自然経過で症状が軽快するため,治療は保存が基本である.しかし,一方で症状が遷延化する,あるいは神経学的所見の改善をみない症例には積極的に手術治療が実施されるべきである23).われわれも発症後6カ月時に症状が継続していた症例に対して術後1年で手術を行ったが,予後不良であったことを報告している17).よって,膀胱直腸障害などを有する馬尾症状がある症例,進行性の運動麻痺をみる症例については早期手術を実施すべき症例が含まれており,また発症後3〜6カ月でも症状が不変であれば手術治療を検討することも肝要である.
われわれは,椎間板ヘルニアの多くが発症から次第に症状が改善していく原因の1つと考えられる椎間板ヘルニア退縮の現象について検討を行ってきた.特に,matrix metalloproteinase(MMP)がきわめて重要な作用をもつことを明らかにし,産学共同により創薬に至った.現在臨床治験を継続しているが,治療法として確立されれば,低侵襲治療を発症直後から患者に実施できるメリットは非常に大きい.本稿では,開発中の低侵襲治療を含め,椎間板ヘルニアに対する保存治療について概説する.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.