Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:司法作業療法の人材育成とは?
Q2:法教育の重要性とは?
Q3:養成校教育でできることは?
はじめに
近年,司法領域における作業療法(以下,司法作業療法)は,急速な発展を遂げている.2022年(令和4年)には司法作業療法の中核的学会として日本司法作業療法学会が創設され1),日本作業療法学会や専門誌においてもその注目度が高まっている.刑事施設における常勤作業療法士の採用も進展し,2024年度(令和6年度)には長野,名古屋,尾道,大阪の刑事施設に配置された.これにより,作業療法士は司法領域の臨床基盤構築を担うとともに,触法者の社会復帰支援における主要な専門職の一つとして認識されつつある.
しかしながら,司法作業療法の人材育成には課題が存在する.作業療法士を志望する学生(以下,作業療法学生)は,国家試験の出題範囲である「医療観察法」以外の司法知識に乏しく,臨床実習においても指定入院医療機関等の一部を除き,司法作業療法に接する機会が限られている.司法作業療法の認知度向上と拡充が進む中,将来を担う作業療法学生に対する人材育成,そして「法教育」は十分とはいえない状況にある.
法教育は,法や司法制度に関する教育全般を指す用語である.これは米国の法教育法(Law-Related Education)に由来し,法律専門家ではない一般市民が法や司法制度,およびそれらの基礎となる価値観を理解し,法的思考を身に付けるための教育を意味する2).法や司法制度は国民全体で支えるべきものとされ,近年の学校教育の学習指導要領には「法に関する教育」が含まれている3).2009年(平成21年)の裁判員制度開始,2022年の成年年齢および裁判員対象年齢の引き下げ等,わが国では司法を支える国民的基盤の確立を目指し,法教育を通じて法や司法制度の理解を深化させる取り組みが活発化している.
しかし,実際には学校教育における法教育の時間的制約,裁判員制度への参加意欲の低下等4),法や司法制度に対する一般市民の理解は十分に浸透しているとは言い難い.作業療法学生も,養成校入学以前に体系的な法教育を受ける機会が限られており,司法制度に関する基礎的知識や実際の経験が不足している可能性が高い.
本稿では,これらの背景を踏まえ,作業療法士の養成校における法教育の取り組みを紹介する.各取り組みに参加した学生の感想も併せて紹介したい(表 1).
Copyright © 2024, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.