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Ⅰ.初めに
我が国において,理学療法士の専門家教育が始まって28年を経過しようとしている.1990年11月現在,理学療法士の養成校は48校であり,毎年約1000名の理学療法士が誕生している.理学療法士としての社会的位置付けが定着し,その業務内容の重要性と社会への貢献度が高まっている現今である.ただ,確実に変遷している医療界と医療行政の中にあって,理学療法士としての専門性と志向性との向上のためには,個々の理学療法士の資質を高める必要がある1).その意味で卒前,卒後教育の占める意義は大きく,養成校の教員,臨床実習指導者の果たす役割は重要である.特に重複,多様化している患者の障害像を的確にとらえて,適切な理学療法治療を実施するための知識と技術,および豊かな人間性の取得と展開とができる理学療法士を育成,養成することがわれわれ教育に携わる者の使命と考える.
理学療法士養成校教員の資格については,臨床経験3年以上のほかに特別な条件は無く,1974年より厚生省の主催で毎年実施されている理学療法士・作業療法士養成施設等長期教員講習会の受講が勧められている程度である.
理学療法教育システムの進んでいるイギリスでは,1977年より教育大学に設けられた教育理論と教育実習とから成る教員資格認定コースを取得することが義務付けられており2),この点は我が国の状況と大きく異なる.資格を取得した理学療法教員は,一般の理学療法士と同様,卒後教育の一環としての研修コースを受講して研鑽を重ね学生教育に還元している.イギリスでの卒後研修コースは,臨床,研究,教育の各分野における内容が設定されているが,教育に関するものはもっとも少なく,1989年の‘Physiotherapy3)’に紹介された中では,わずか4コースのみである.また,学士号を有する教員の中には,1982年より始まった修士課程コースで学んでいるものも少なくない4).1990年現在,協会公認の養成校32校のうち,半数以上の17校で修士課程コースを有しており5),この傾向は今後も強まるものと予想される.この点は我が国の現状でもっとも遅れているおり,理学療法の先進国を目指す上でぜひとも解決しなければならない重要課題である.
21世紀へ向けて,我が国における理学療法のますますの発展と展開の拡大のためには,個々の理学療法士の知識・技術・資質の高揚が不可欠であり,その基盤を築く養成校教員の指導力と資質との向上が必要条件と考える.
人間を対象とする理学療法士の教育に関し,種々の考えが述べられているが6,7),ここでは理学療法学生を教育する学校勤務理学療法士の資質向上に対する卒後研修について,私立養成校の立場から述べることにする.
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