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Key Questions
Q1:若年性認知症施策の経緯とは?
Q2:若年性認知症とは?
Q3:若年性認知症の人の就労の実態とは?
はじめに
読者の皆さんの中で,若年性認知症の本人やその家族に出会ったことがある方はどれくらいいるだろうか.日々の臨床の中では,圧倒的に65歳以上の認知症高齢者やその家族に対して作業療法を実践する場面が多く,どこか遠い存在に思うかもしれない.若年性認知症は働き世代での発症のため,病気によって支障が生じると,本人や家族だけでなく,社会的な影響が大きい.
わが国では認知症施策を軸にして,若年性認知症の人の状態に応じた適切な支援が推進されてきた(図 1).2008年(平成20年)の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」1)において本格的な若年性認知症施策が開始された.その取り組みの一つとして,全国初の若年性認知症コールセンターが認知症介護研究・研修大府センター内に開設され,本人やその家族等から電話やメールにて相談に応じている2).2012年(平成24年)の「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」3)では,本人・家族向けの「若年性認知症ハンドブック」4)や相談対応者向けの「若年性認知症支援ガイドブック」5)が作成・配布され,これらはホームページ上から閲覧とダウンロードが可能である.さらに,本人や家族からの要望等も踏まえて,さまざまな支援を行うための窓口をワンストップとし,若年性認知症の人が発症初期の段階から適切な支援を受けられるよう,全国の都道府県に相談窓口を設置し,関係者のネットワーク調整等の役割を担う若年性認知症支援コーディネーターを配置することが,2015年(平成27年)の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」6)に明記された.若年性認知症支援コーディネーターは,個別相談支援,医療や介護,労働等の関係者による支援体制の構築,若年性認知症に関する普及・啓発活動等を行う.2022年(令和4年)時点で全都道府県・9指定都市に配置されている7).そして,2019年(令和元年)6月に取りまとめられた「認知症施策推進大綱」8)においても,「若年性認知症の人への支援」が引き続き推進されている.2024年(令和6年)1月施行の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(以下,認知症基本法)9)では,第3章の基本的施策「認知症の人の社会参加の機会の確保等」において,意欲および能力に応じた雇用の継続,円滑な就職等に資する施策を講じることが明記され,今後,若年性認知症の人の就労に係る施策の展開がさらに期待される.
一方で,若年性認知症は周囲の周知や理解が十分とはいえず,本人や家族は出会う関係者によって,得られる情報に差が生じやすい.そのため,上述の施策の展開や活用できる資源を知っていることは,本人や家族の理解を深め,課題解決やシームレスな支援推進へ寄与するものと考え,一読されることをお勧めする.
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