増刊号 テクニカルエイド—つくる自助具・使える自助具
第2章 疾患・障害別アセスメント—導入における考え方
7 認知症者への環境調整
永田 優馬
1
Yuma Nagata
1
1奈良学園大学
pp.717-720
発行日 2024年7月20日
Published Date 2024/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203862
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認知症者と環境との関係
認知症者の言動は生活環境の影響を非常に受けやすい.その背景には,認知機能障害を原因とし,環境に適応できない結果,状況に不適切な行動が現れるというヒト-環境との相互作用が想定される.Lawtonら1)は,高齢者の能力と環境負荷に関して,ヒト-環境との相互作用の理論的根拠を提示した.適応能力と環境負荷の適応関係を2次元モデルで表すことで,両者の適切なバランスが必要であることを示したものである.すなわち高齢者の能力が高い場合は,環境負荷に対して適応行動の領域が広い.一方で,能力が低い場合は,環境負荷に対して否定的行動や不適応行動の領域が拡大する.この理論的根拠を基に,認知症者の行動心理症状が出現する背景に環境要因がかかわることが説明されてきた.つまり,生活環境を適切に調整することで,認知症高齢者の行動を潜在的に支援できることを示唆している2).したがって,環境そのものが価値ある治療手段となることから3),認知症者に関連する環境は“ヒーリング環境”4),または“治療的にデザインされた環境”5)といわれることもある.
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