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今回で身体障害者補助犬講座は最終回を迎える.最終回は補助犬という枠組みを少し広げて補助犬訓練事業者による動物介在介入(Animal Assisted Interventions:AAI)を紹介したい.補助犬訓練事業者は補助犬以外にも「人と犬との社会における共生の方法」を模索している.AAIとは動物を意図的に取り入れ,または編入された,人の治療効果のための目標設定がされ,構成されている健康,教育,人的サービス(例:社会福祉事業)への介入である1).その中でも目標をもって計画・構築された治療的介入で医療,教育,人的サービスの専門家(心理学者やソーシャルワーカー等を含む)によって監督,実行される動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)1)はよく知られているところである.また,人と動物のチームによって動機づけ,教育やレクリエーションを目的として運営されるAAA(Animal Assisted Activity:AAA)とは,正規の医療,教育等の型にはまらない,計画され目標設定されて行われている,より緩やかな相互作用(ふれあい)や訪問活動であり1),さまざまな施設で取り組まれている.なぜ補助犬訓練事業者がAAIに取り組むのか,その意義について説明したい.
補助犬として育成されたものの,補助犬にならない犬は,補助犬のPR犬,または家庭犬としてキャリアチェンジをし,幸せに生活していることはよく知られている.犬の個体ごとの適性を見極め,その犬が幸せに生きられる道を探すのも補助犬トレーナーの役割の一つである.その場合,その犬は補助犬になれなかったのではなく,補助犬にならなかったと判断される.もっと適性を発揮できる場所で暮らすことが選択されたと考えるのである.キャリアチェンジする犬の中には,犬を扱うトレーナー,またはハンドラー(犬の行動をコントロールする人)のコントロールによっては人とのすばらしい相乗効果を生み出せる個体や,人に対して誰にでも好意的な行動をとり,攻撃性がなく,おおらかでAAIにより向いている個体もいる.そのような犬の適性を見極める能力をもっているのが補助犬トレーナーである.また,補助犬トレーナーは,自身が障害のある方と信頼関係を築くだけでなく,障害のある方と犬との関係を深めるためのスキルをもっている.この犬の適性を見極める力と,犬のよい面を引き出し,犬と人を結ぶ力は,AAIの場で犬を治療的に用いる際にも必要とされる.補助犬訓練事業者は,より適切な犬とハンドラーをAAIに提供できる技術と環境を有しているといえる.ここに補助犬訓練事業者がAAIにかかわる意味がある.
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