増刊号 急性期における疾患別作業療法
第5章 急性期におけるチーム医療と合併症管理
4 糖尿病合併症のリスク管理と作業療法
成田 雄一
1
Yuichi Narita
1
1関東病院
pp.971-977
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203488
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はじめに
わが国は,医療技術の進歩により平均寿命が延長し,超高齢社会を迎えた.それに伴い内部障害を有する対象者は増加しており,その中でも糖尿病治療に関連する医療費増大も問題となっている.
糖尿病は単一の病態ではなく,血管病変を主体として,さまざまな代謝異常を惹起する.また,高齢化による罹病年数の長期化が,下肢慢性創傷,認知症やうつ病の悪化とも関連し,重篤化を招くことも稀ではない.このような糖尿病の多種多様な合併症への対応に多くのOTが苦慮している.2016年(平成28年)時点では「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人,また,「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000万人で,合計は2,000万人と推計されている 1).今後も糖尿病を有する対象者が増加していくことが予測される.
しかしながら,糖尿病診療におけるOTの介入報告は全国的に少なく,合併症に対する上肢機能,ADL,自助具作製,認知・精神機能への間接的な評価・介入が報告されているが,予防や初期診断から支援している報告はわずかである.欧米では体系化された作業療法プロトコール(REAL Diabetes)の報告2)があり,本邦では当院の療養支援チームで作成した作業療法プロトコール(BEST Program)で教育入院から外来継続までを支援している3).
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