わたしの大切な作業・第62回
手・作業
金原 瑞人
1
1法政大学
pp.543
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203387
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先日、あるエッセイで、手の幽霊の話を書いた。人間の体の部位で、首(頭)を除いて最も多く怪談のネタとして登場するのは手だ。フランス人作家、ギー・ド・モーパッサンの「手」、アイルランド人作家、シェリダン・レ・ファニュの「白い手の怪」、イギリス人作家、W・F・ハーヴィーの「五本指の獣」、アーサー・キラ・クーチの「小さな手」などは有名だ。
このところ、自分の手が気になってしょうがない。なぜかというと、ここ数年、昔の趣味が復活してマジック(魔法ではなく手品)に凝りだして、一カ月に二、三度、新しいマジックグッズを買うようになったからだ。マジックといっても色々あって、舞台に象を出現させるものもあれば、本物の自由の女神を消し去るというものもある。しかし象や自由の女神は入手しづらいし、入手できても保管が面倒だ。うちで鏡を前に練習して楽しむマジックは大体がスライハンド物になる。スライハンドというのはsleight of handのことで、手先の器用さというふうな意味。クロースアップ(目の前で演じられる)マジックはほとんどがこれだ。トランプやコインやサイコロを使った、あれ。
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