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Key Questions
Q1:長期入院者への地域移行支援の方法とは?
Q2:精神障害にも対応した地域包括ケアシステム協議の場に参加する意義とは?
Q3:精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに応じた病院づくりとは?
はじめに
近年,精神医療福祉サービスの増加や薬物による治療の進歩に伴って,精神疾患になったとしても社会生活を維持しながら外来で治療を受ける患者は増えている.一方で入院患者は減少傾向にあり,入院患者の6割を占める1年以上の入院患者(以下,長期入院者)の高齢化や死亡退院,身体的不調による転院が加速的に増えていることが影響している.また,救急医療と地域連携にかかわる診療報酬が厚くなり,病院完結から地域完結(地域医療構想)へと政策的に推し進められてきている.
この10年をみると精神科医療は大きな転換期を迎えようとしており,精神科作業療法への影響は非常に大きい.現在,精神科作業療法の多くは大集団による実施であり,その対象は長期入院者が多い.当院の状況でいえば,精神科作業療法利用者の7割が長期入院者であり,ADL・身体機能の低下によって,主体的に活動を行えない患者が増えている.維持期を中心にかかわっていたOTは今後,急性期・回復期・外来患者中心へとシフトせざるを得ない状況が生まれる.疾患についても,統合失調症に加え,気分障害や認知症,発達障害等に対応していくことも必要となってくる.
このような流れにある中,国策として打ち出された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(以下,「にも包括」)は,たとえ精神に障害があったとしても,分け隔てなく必要なサービスが受けられ,安心して暮らせる街(共生社会)にしていくことを目的とする.筆者は,このシステム構築の方法には以下の3つがあると理解している.①病気が悪くなったら入院,よくなれば退院して,地域で長く住み続けるための医療・福祉・保健・介護の支援を厚くし,誰もがうまく使えるようにすること(共助),②国民がメンタルヘルスを正しく理解し,不調に気がついたらどこの誰に相談するかという仕組みをつくること(自助,互助).そして①と②を進めるため,③協議の場をもち,多職種・多機関で市町の障害福祉計画を推し進めること(公助)である.
「にも包括」の中で,長期入院者の地域移行は一部の内容ではあるが,精神科作業療法が関与する部分が大きくあることから,今回は長期入院者支援を中心に伝える.この施策に対し,OTがどのように送り出す力をつけ,どのような病院づくりを行っていくと,「にも包括」に寄与できるのかをまとめた.各地で活躍しているOTが自身の活動に般化しやすいようにお伝えしたい.
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