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2022年(令和4年)6月23〜25日まで,第59回日本リハビリテーション医学会学術集会がパシフィコ横浜で開催された.私にとって本学会はCOVID-19のパンデミック以降,初めての現地参加となり,私は2年ぶりに対面式の発表を行った.6月にもかかわらず35℃近い猛烈な暑さで,最寄り駅から会場まで数分歩くだけで全身滝のような汗をかいたことが印象的だったが,感染状況によりコロナ対応がやや緩和したタイミングのためか,現地参加の方が多い印象を受けた.オンデマンドでは6月27日(月)〜7月31日(日)まで聴講可能なため,スケジュールの都合で聴けなかったセッションを聴いたり,あらためて見直したりできるため,非常にありがたいシステムである.
メインテーマは「知と実践のプロフェッショナル」.芳賀信彦氏による会長講演の「リハビリテーション医学における知と実践」は,根拠のない「知」に基づいたリハビリテーションから脱却し,「知」を積み上げ,それに基づいて「実践」できるプロフェッショナルを皆で目指していこうというお話だった.また自立を支援していくリハビリテーションにおいて「アウトカムの設定をどう考えるか」という問いの中で,治癒率や死亡率といった医療でよく用いられるものではなく,自宅復帰率や就労率(就労継続率),Patient(Client)Reported Outcome等々が想定されるが,あらためて「自立」について深く理解する必要があるとの問題提起をされた.その後の講演で熊谷晋一郎氏は「自立とは社会の中に依存先を増やすこと」,「社会環境は多数派を対象にデザインされており,私には合っていないものが多い」と表現されており,妙に納得した.熊谷氏は脳性麻痺で車いす生活をされる小児科医であり,東京大学の研究者でもある.彼の表現,話を聴き,目指していく自立のあり方についてあらためて考えさせられた.またわれわれOT仲間である川口晋平氏が現在,3Dプリンタを使用して作製する「片手でできるプロダクト」のことをふと思い出した.依存先として道具のバリエーションを増やすこともできるOTの活躍の場はあらためて広いと感じた.
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