増刊号 こんなときどうする? 運動器の作業療法ナビ
第1章 運動器の解剖と生理
1 運動器作業療法の臨床実践
大瀧 誠
1
,
柴田 克之
2
Makoto Otaki
1
,
Katsuyuki Shibata
2
1神戸学院大学
2金沢大学大学院
pp.686-691
発行日 2022年7月20日
Published Date 2022/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203042
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はじめに
近年,回復期リハにおける対象疾患は脳血管疾患よりも整形外科疾患の増加が著しく1),その背景には高齢化に伴う転倒・骨折,関節疾患,脊髄損傷等の運動器疾患の増加による影響が示唆されている2).運動器の疾患は主に整形外科疾患が多い.運動器は骨,関節,筋,神経から構成され,それらに疾患や外傷による構造的破綻,廃用(disuse),過用(overuse),誤用(misuse)の機能的要因が生じることにより,正常な機能が保てなくなる3).
作業療法の対象者は老若男女問わず,全員が生活行為者であり,学業や仕事に応じた諸活動を遂行している人たちである.もし身体的な支障があったとしても,日常生活を遂行しなければならない.われわれが臨床場面で出会うそうした対象者は,疾患特有の主症状(一次性)はもちろん,関節拘縮,筋萎縮,疼痛,炎症等,受傷部位以外のさまざまな症状(二次性)を伴っていることが多い.したがって,OTは対象者に触れ(アプローチ),感じ(評価),共感(真なる問題を理解)し,さまざまな情報を収集して,対象者のこれまでの生活を踏まえて,今後の経過を想像しながら,現在の能力と将来的なビジョンを,対象者と共に再構築していくことが求められる.
これまでにも運動器の作業療法については,多くの総説や研究論文で報告されている.本稿では,対象者の構造的理解からアプローチの技術体系,そして作業の特性を活かした作業療法の過程を概略的に述べる.
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