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はじめに
腰部L5/S1椎間板内最大圧迫力(以下,圧迫力)の計測は,1961年,Morrisら1)が静的モデルを用いて算出して以来,現在までに静的および動的なkineticモデルを利用した圧迫力の計測が行われてきた2,5,15).Chaffin2)の疫学的調査によると,工業・産業分野では,圧迫力が3,400 Nに達する作業活動を繰り返していると全労働者の5%に腰背部痛の発生を報告し,さらに4,500 N以上に達する作業活動では全労働者の10%に腰背部痛が生じたと報告している.1981年,米国国立労働安全衛生研究所(National Institute of Occupational Safety and Health;NIOSH)は,重量物を持ち上げる時に生じる圧迫力の許容限界を3,400 N以下とする基準値を設けた3).1992年以降から,医療,福祉分野においても腰部損傷に関する臨床事例が報告されるようになった.なかでも重度患者をベッドから移乗する動作は最も負荷量が大きく,介助動作が繰り返されることによる腰背部損傷(LBD)の発生は,工業・産業部門に比べ1.5倍の高い発生頻度を報告している4).したがって,独力で移動できない重度な患者を移乗する時は,必ず2人以上で介助するか,福祉機器を用いて介助することが欧米諸国の労働保健機関で厳しく指導されている3).
本研究の目的は,介助中の介護者腰部(L5/S1)椎間板内に生じる負荷量を,腰部運動解析装置(lumbar motion monitor;LMM)と表面筋電計を用いて計測し,さらにEMG assistedモデル5-7)で圧迫力を算出して,各介助課題の比較から腰部への圧迫力を少なくした効率的な介助の諸条件を明示することである.
本研究の仮説として以下の3点を挙げた.第一点は,介助を行うベッドの高さが高いほうが介助者の圧迫力は減荷する.第二点は,ベッドから起こす速度をすばやく介助するより,ゆっくりした速度で介助したほうが腰部圧迫力は減荷する.第三点は,体幹のカウンター動作や回旋動作が伴わない介助方法は圧迫力が減荷する.以上の仮説を立証することが本稿の目的である.
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