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私はすでに子育ても終わり,特に不自由も感じないことから今の家でこのまま生活し続けようと思っていますが,皆さんはいかかでしょうか? もし「転居するかも……」と考えているとしたら,たぶんそれは「仕事の関係?」,「家族の事情?」,もろもろの個人の事情もあるかと思います.しかし,今この地域だから住み続けたいと思われている方も多いのではないでしょうか? 今の地域に住み続けたいと思う要因には,何があるでしょう.職場に近い? 子どもの学校のため? 交通の利便性が高い? 実家の近く? 近所に仲のいい友人がいる? 少し想像してみてください.現在の良好な社会環境を維持できるものなら維持したい,そう思うのが普通だと考えます.
私は今「介護予防活動普及展開事業」という事業を中心とした地域包括ケアシテムの深化にかかわる仕事しています.「地域包括ケア」とは,人生や生活で「したいこと」を「なじみの」環境の中で続ける1)ことといわれています.その普及のため,自立支援型地域ケア個別会議を各市町に広げていく役割を担っています.今までいろいろな市町に行って,個別の事例を通して,それぞれの市町のもつ地域の課題について話し合っていますが,住民の皆さんがこの地域で生活し続けるためにはどうすればいいのかと悩むことが多々あります.たとえば,車の運転ができなくなった高齢者に低栄養が課題なのでタンパク質を食べてほしいけどお肉を買えるお店が近隣にないとか,ある地域にはもう訪問入浴サービスがないとか,65歳以上の住民の意識調査で大半の人が「要介護2になったら今の地域に住み続けられない」と考えているとか……(ちなみに介護保険の施設入所は要介護3からです).島嶼部や中山間地域にお住まいの皆さんはある程度感じられていると思いますが,すでに現実の問題となっています.自分が「したいこと」を「なじみの」環境の中でしながら,自分の地域で住み続けるには何らかの努力が必要で,中でも一住民としての「私たちが地域をつくっていく」という意識が必要であることを痛感しています.
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