発言席
独居住民を地域住民へ
西岡 昭夫
1
1静岡県立韮山高校
pp.817
発行日 1983年10月10日
Published Date 1983/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206735
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都会の人がいなかにくると「土地があいていますね」とよく言う。マンションや道路になっていない田畑森林を指してのことである。「まだまだきれいな水の流れている川があるのはもったいないことです。この湾は東京湾などにくらべると事故も少なくないので,いくらでも開発の余地はありますよ」開発担当役人の言葉である。しかし他人ごとではない。
昭和39年に沼津・三島地域でおきた石油化学コンビナート建設反対運動中の住民学習会でのことであった。一人の男が立ちあがり,話途中の私に向かって「先生は夜,浜に出たことがあるかね。出てみな,沖の方に灯がついているのはわしらの舟だよ。夜,風がおかから海に吹き,海っぱたの発電所のガスが海へいくからまあいいって言ったね。公害の先生がそんなことじゃあ困るよ。わしらがおかにあがってくる昼間は,風は海からおかへ吹くっていうじゃあ,まるでわしらははさみ討ちになっちまう」環境への認識がいかに自己中心になるかを思い知らされた出来事であった。
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