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はじめに
2011年(平成23年)に制定された「スポーツ基本法」1)では,障害者が積極的にスポーツを行うこと推奨しており,加えて,第2期「スポーツ基本計画」(2017年4月〜2022年3月の5カ年計画)2)において国は,成人障害者の週1回以上のスポーツ実施率を19.2%から40.0%へ引き上げる取り組みを実施している.
2017年度(平成29年度)の厚生労働省調査によれば,脳血管疾患の罹患者は111万5,000人となっている3).また,「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)報告書2019年」4)では,脳卒中の内訳は脳梗塞/TIA 76.1%,脳出血 19.5%,くも膜下出血 4.5%である.発症年齢も30〜40代の若年者もおり,年齢とともに増加し70〜80代でピークとなっている.このような背景から脳卒中者のスポーツは,心身機能維持のみならず「生涯スポーツ」としてQOLの向上のためにも重要となる.
スポーツとは何かを一言でいうことは意外と難しい.「障がい者スポーツ指導教本」5)では“sportとは,決められたルールに則って行われる身体を使った遊戯,競争,肉体的鍛錬の要素を持つ身体活動をいうが,決して競技スポーツやチャンピオンスポーツだけを指すものではない.”としている.近年では,いわゆる“一般的”なスポーツや高齢者等を対象としたような「レクリエーションスポーツ」の他,「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」6)や将棋や囲碁のような記憶能力や判断能力を必要とする「マインドスポーツ」7)も行われており,スポーツの定義やその範疇も多様化してきている.
本稿では,主に身体的活動を伴うスポーツについて,脳卒中者のスポーツの現状と留意点,これまでの取り組みで筆者が感じていることを述べる.
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