連載 認知症と仏教・第11回
すべてをよしとする
日髙 明
1,2
1NPO法人リライフむつみ庵
2相愛大学
pp.1326-1327
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202319
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シガさんの歌い泣き
シガさんは,物静かな方だった.おそらくもともとの性格もあったと思うのだけれど,それに加えてアルツハイマー病の進行により失語状態になっていた.何か話しかけられると言葉をオウム返しにして答えることはできるが,自発的な発話はほとんどなかった.ただ,こちらの言っていることは一部理解できる.私たちが冗談を言うと,ふふふ〜と漏らすように笑っていた.
そんなシガさんは,歌が大好きで,とても上手に歌う方でもあった.普段は自分から話すことはめったにないのに,レクリエーションで曲がかかると,目が覚めるようなきれいな高音で歌い出す.童謡から『北国の春』といった往年のヒット曲まで,いくつもの歌を,歌詞もほぼ正確に歌うことができた.
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