寄生虫屋が語るよもやま話・3
“婦唱夫随”もまたよし—肺吸虫症
太田 伸生
1
1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野
pp.338-339
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200734
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“戦後強くなったのは女性と靴下”などといわれたものであるが,天照大神をはじめとして,わが国には古来女性が強い文化があったと思う.私の母方の祖母は筑豊の出で,ヤクザにもひるまないところがあったし,ほかにも“日向カボチャ”や“土佐のハチキン”など,強い大和撫子の例を引くのには困らない.
さて,今回は肺吸虫症の話である.かつて食料事情が悪かった頃,農山村ではモクズガニは貴重な蛋白源であった.サワガニやモクズガニはウエステルマン肺吸虫の中間宿主で,ヒトはえらに寄生するメタセルカリアを経口摂取して感染する.モクズガニは生で食するのには適さず,カニ汁などに調理するが,その際にまな板や包丁がメタセルカリアで汚染され,同じ道具を使う漬物なども汚染されるというのが感染経路であった.胸水貯留,胸痛,鉄錆色の喀痰など,臨床症状としては比較的激しい病気である.
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