増刊号 精神科作業療法
第4章 精神科作業療法のフィールド
2 精神科訪問看護における作業療法士の役割と多職種連携
真下 いずみ
1,2
Izumi Mashimo
1,2
1藍野大学
2長岡ヘルスケアセンター(長岡病院)
pp.853-859
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202192
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はじめに
2004年(平成16年)に策定された精神保健医療福祉の改革ビジョンでは,「入院医療中心から地域生活中心へ」のスローガンのもとに,長期在院患者の地域移行・定着が推進されてきた1).すでに1960年代に脱施設化が進められた米国や英国では,精神障害者の地域生活を支えるためのコミュニティケアが発展しており,中でも訪問支援が精神障害者の再入院を抑制し,臨床状態を改善するとして普及している2,3).
米国では1970年代に,最重度の精神障害者に対して多職種チームが積極的に訪問するAssertive Community Treatment(ACT)が開始された4).ACTでは医療や生活支援等の包括的サービスが提供され,訪問頻度,職員構成,利用者の参入基準等を示したフィデリティが存在する.英国においても1980年代後半にACTが取り入れられた5).さらに英国では早期介入チーム,在宅治療チーム,積極訪問チーム等に機能分化した訪問チームの設置が推進され6),2009年時点で約700チームが設置された7).
本邦では精神科訪問看護(以下,訪看)がコミュニティケアの中心を担ってきた.訪看にはフィデリティや機能別チームはなく,多様な患者層に幅広いケアを行う特徴がある8,9).訪看は,看護師(以下,Ns)の他,OT,精神保健福祉士(以下,PSW)が実施できるが,多職種チームによる訪看は十分普及していない10).そのため訪看におけるOTの役割や多職種連携の方法について,職種間でコンセンサスが得られていない可能性がある.そこで本稿では訪看について概説したうえで,訪看におけるOTの役割と多職種との連携方法を検討する.
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