特集 周産期メンタルヘルス:最新事情
各論:産科編
多職種連携:助産師の役割
新井 陽子
1
ARAI Yoko
1
1群馬大学大学院保健学研究科
pp.822-825
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002215
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はじめに
周産期のメンタルヘルスは母子の健康に深く関わる重要な課題である。近年,出産前後の女性のうつ病や不安障害の有病率が高いことが国内外で報告されている。例えば,世界保健機関(WHO)のメタ分析では途上国の産後女性の約20%が臨床的なうつ状態を経験するとされ,これは先進国の報告より高率である1)。一方,日本においてエジンバラ産後うつ自記式質問紙(EPDS)9点以上で,産後うつの可能性がある女性は9.8%2)であり,さらに妊産婦死亡の原因として自殺の占める割合が上昇傾向にあることが指摘されている3)。母親の産後うつやメンタルヘルスの不調は苦痛や機能障害をもたらすだけでなく,育児への悪影響や乳児の発達遅延などを通じて子どもの健康にも長期的な影響を及ぼす。また,令和2年(2020年)度の月齢0か月児の虐待死は15名(30%)で,加害動機は産後うつ・精神障害,育児不安であり4),周産期メンタルヘルスへの介入は母子の健康を守るうえで公衆衛生上きわめて重要である。

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