増刊号 精神科作業療法
第2章 時期別の作業療法
2 精神科救急病棟での作業療法
大阪 一樹
1
,
岩根 達郎
1
,
林 雅子
1
,
片平 稚子
1
Kazuki Osaka
1
,
Tatsuro Iwane
1
,
Masako Hayashi
1
,
Wakako Katahira
1
1京都府立洛南病院
pp.776-781
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202179
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はじめに
精神科救急病棟では,幻覚・妄想,興奮,錯乱等の状態で入院するため,非自発的入院として,対象者自身は自分の意思とは無関係に入院に至っているケースが多く存在することを念頭に置いておく必要がある.
筆者が精神科救急病棟での作業療法に従事する中で,日々の流れの早さに困惑することが多々ある.それはただ短期入院という客観的時間だけの問題ではなく,対象者の状態の変化,疾患の多様性,従事するOTが専属ではなく兼務となっており常に病棟の状況を把握できない等,さまざまなことを要因とした主観的時間の早さが考えられる.これらは従来の画一的な集団プログラムを淡々とこなしているだけでは解決することはなく,目の前の対象者個々に合わせたかかわりや作業療法を提供しないと解決しないことが経験の中でわかりはじめている.宇田1)は,集団プログラムに参加し,精神機能・身体機能・生活能力等の向上,改善を図ることも重要だが,病状が改善したからといって退院後の地域生活や就労が円滑に進むわけではないと述べている.本稿では,これからの精神科救急病棟での作業療法の役割と課題について,事例を通してまとめたい.
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