連載 続々・歴史と遊ぶ「ハンセン病と隔離政策」・第2回
明治19年の頓挫と隔離政策
江藤 文夫
1
Fumio Eto
1
1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.444-448
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202089
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太平洋戦争敗戦後の衛生行政
幕末に,長州藩では伊藤博文ら5名が英国留学のため密航を成功させ,薩摩藩も密かに外交使節と共に森 有礼ら15名の留学生を英国に派遣し,少し遅れて幕府も公式に中村正直,川路太郎を引率者として14名の留学生を英国に派遣した.
明治維新を迎え,歴史的経緯からも当初英米に学ぶことを企図していた岩倉具視らの外交使節団は,欧米諸国を体験する間に,当時急速に国家統一から強大な国家へと発展を始めていたドイツをモデルとして近代国家を建設する基本方針を固めた.国民の健康を守り増進する行政施策も,住民の自発的活動よりは急性感染症対策に効果を発揮する警察の取り締まりを中心とした仕組みを発展させ,大正,昭和にかけて定着させていった註1).
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