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はじめに
近年では,脳画像技術や解析技術の目覚ましい発展により,非侵襲的に高い空間解像度で脳の構造,機能が可視化できるようになってきている.特に神経回路解析には各学問領域から注目が集まっている.神経回路解析は従来の技術で病態解明が困難とされていた種々の脳疾患の診断,脳腫瘍除去術の術前評価,予後予測についても有用であり,臨床応用されるようになってきている.また,アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease:AD)等の神経変性疾患における早期診断のバイオマーカーとしての役割も期待されている.MRIを用いた神経回路解析のイメージング法としては,解剖学的結合を評価する拡散MRI,機能的結合を評価する安静時機能MRI(resting state functional MRI:rsfMRI)がある.これらのイメージング法は従来の病巣解析とは異なり,神経ネットワークの生理状態や障害を評価するものである.拡散MRIは脳内における水分子の運動を捉えることにより大脳白質を中心とした脳の微細構造の情報を把握することができ,大脳皮質領域間の解剖学的結合を評価することができるイメージング法である.一方で,rsfMRIは,解剖学的な連結構造が仮定されない場合を含む離れた領域間の神経活動パターンの情報を捉え,その類似性より機能的結合を評価することができるイメージング法である.これらのイメージング法はリハ効果検討における神経可塑性の結果指標として,また予後予測の一助として利用されるようになってきている.ここではこの2つの代表的な脳イメージング法の基本原理を簡略に概説し,画像情報の解釈およびリハ関連領域の先行研究について紹介する.また,リハ領域における臨床応用が期待される近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)についても触れたうえで,これらのイメージング法を作業療法に活かす視点を述べる.
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