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はじめに
まず,筆者(朝日)と障害学との関係について触れておきたい.筆者は障害学について学びはじめた段階であり,今回テーマとしていただいた「作業療法研究に障害学の視点を活かす」ことについて十分な学びができていないのが現状である.筆者が障害学に魅力を感じた理由の一つは,障害学が「当事者学」であるということである.作業療法においてもクライアントである当事者を中心とした作業療法の大切さが語られているが,クライアント中心とは何か,どのような支援がクライアント中心と言えるのか等,筆者なりに模索していた.そのときに巡り合ったのが「障害学」である.これまで自身がとらえてきた障害のとらえ方と異なることに驚くと同時に,障害当事者の力強さというものを感じた学問であった.
障害学は「障害,障害者を社会,文化の視点から考え直し,従来の医療,リハビリテーション,社会福祉,特殊教育といった『枠』から障害,障害者を解放する試み」と言われている1).長瀬1)によると,英国障害学の研究者であるMichael Oliverは,自らを排除する社会,「個人的なことは社会的なこと」という視点から,障害者を排除する社会組織に目を向け,従来の個人モデル,医学モデルから脱却し,社会モデルを定式化した.この社会モデルではimpairmentとdisabilityは区別され,障害者の問題はdisabilityにあるとされている.disabilityは「身体機能障害をもつ人々を,まったくかもしくはほとんど考慮せずに,社会活動のメインストリームへの参加から彼らを排除している現代社会を原因とする,活動の制限もしくは不利益」と定義づけられており2),障害者が社会活動をする際に障壁となる社会を問題視している.そのため,英国障害学での障害者の英語表記は,people with disabilities(障害をもつ人)からdisabled people(障害を負わされた人)へと変更されている3).
本稿では障害学の基本的視座である「障害の社会モデル」に焦点を当て,このモデルが作業療法研究にどのような示唆を与えるか検討していきたい.
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