今月の臨床 産婦人科と糖尿病—基礎知識と実地臨床
糖尿病—最新の研究成果と新知見
平野 勉
1
,
足立 満
1
1昭和大学医学部第一内科
pp.120-123
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409905047
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はじめに
最近の爆発的な患者数の増加で国民病の感もある糖尿病の成因はいまだに明確には解明されていないが,その根幹となるインスリン分泌低下とインスリンの作用不足(インスリン抵抗性)のメカニズムに関しては,その本質が次第に明らかにされてきた.さらに高血糖そのものが糖尿病の進展,増悪に大きく関与することが認識されるようになった.肥満は2型糖尿病発症の重要な危険因子であるが,肥大した脂肪細胞からは遊離脂肪酸(FFA)やTNF—αが分泌され,これらがインスリン抵抗性を生じさせることも確認されている(図1).最近の発生工学的手法を用いた実験からは,インスリン抵抗性がいくら増大しても代償的にインスリン分泌が増加すれば糖尿病発症には至らないが,インスリン分泌機構に問題があると,わずかなインスリン抵抗性の増大で糖尿病が発症してしまうことが示された.これは本邦のように高度肥満の少ない民族でなぜ2型糖尿病の増加が著しいかを説明する上で重要な研究結果である.
1型糖尿病は内分泌臓器の自己免疫性疾患の代表であるが,最近その中で急激にケトアシドーシスを発症し極めて重篤な転帰をたどり,自己免疫の関与しない亜系が存在することが報告され注目されている.本論文ではこれらのトピックについて簡単に概説する.
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