連載 作業療法を深める ㉞民俗学
民俗学でみる老い
畑中 章宏
Akihiro Hatanaka
pp.1168-1171
発行日 2019年10月15日
Published Date 2019/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201884
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「老い」を表す言葉
日本人は老いること,老い耄れることについて,さまざまな言葉を使って表してきた.歴史と民俗の中に記されたそういう言葉をみていくと,私たちが「老い」をどのように考えてきたかをたどることができそうだ.
『万葉集』(奈良時代末期)で大伴家持が,年老いた鷹番が自慢の鷹を逃がしてしまったことに対し,「狂れたる醜つ翁」と呼んで,厳しくなじる姿がみられる.紫式部は『源氏物語』(平安時代中期)で,「老いゆがむ」,「老いひがむ」,「みにくく老いなる」等というふうに,老いについて否定的にみた言葉を使っている.式部はまた老耄についても,「今はこよなきほけ人」,「ほけほけしき人」,「年の数つもりほけりける人」と表現していた.
Copyright © 2019, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.