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Key Questions
Q1:フレイル高齢者の割合は?
Q2:フレイルの可逆性要因は?
Q3:OTによるフレイル関与は?
はじめに
超高齢社会のわが国では,人生100年時代を見据えた健康長寿施策の構築とその推進が課題となっている.その中において厚生労働省は,高齢者の特性を踏まえた保健事業の推進として,フレイル(frailty)に対する取り組みの強化を掲げている1).認知症との関連では,フレイルが進行している高齢者は認知症と診断されるリスクが高い2)ことからも,OTがフレイルに目を向ける必要性は高い.
frailtyは従来日本語訳として「虚弱」が用いられてきた一方,老衰や衰弱等といった日本語訳も使用され,不可逆的な状態と捉えられる向きも否めなかった.しかしフレイルは介入によって健常(健康)な状態に戻るという可逆的な側面をもたせたかったこと,虚弱は必ずしもフレイルの要因とされる身体的,精神・心理的,社会的な各側面を包含している表現とはいえなかったことから,日本老年医学会は,2014年(平成26年)に虚弱に代わる用語として「フレイル」を使用することを声明した.そしてフレイルを高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し,生活機能障害や要介護状態になりやすく,また死亡等の転帰に陥りやすい状態とした3).特に,後期高齢者ではフレイルの状態を経て要介護状態に陥ることが多いため,その予防や改善に向けた取り組みが重要とされている.ところが,OTが着目すべき点や,介入の手がかりと効果を明らかにした報告はきわめて限定的な状況にある.
そこで本報告では,筆者も参加している日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)プロジェクトが,これまで全国の市区町村と協力して取り組んできた大規模調査のデータに基づき,第1に地域在住高齢者のフレイル割合とフレイルの状態から改善した者の特徴,第2に厚生労働省が介護予防策で推奨している「通いの場」参加者におけるフレイルを包含した要介護リスク者の割合,第3に通いの場への参加によってもたらされる波及効果を述べる.そして第4にOTのフレイルに対する関与のあり様を展開する.
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