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はじめに
発達領域の作業療法の現場では,対象となる疾患や年齢により,発達障害児・者(以下,対象児・者)やその家族から,さまざまな相談が挙がる.OTは,対象児・者に対して運動機能の発達や認知発達を促すとともに,対象児・者の参加しやすい環境を調整することが重要な役割となる.また対象児・者への支援では,二次障害の予防も重要な課題となる.対象児・者自身が新たな課題に挑戦していく力のベースとなる,自尊心や自己肯定感を高めていくために,OTには対象児・者およびその家族への援助も求められる.対象児・者の中には,心身機能・身体構造や,その障害特性により,実生活上での成功体験が少ないために,「できない」,「自信がない」という気持ちが先行し,遊びや学習等の活動に参加するモチベーションが低いケースもある.また重度心身障害児・者の場合には,そもそも本人が環境に変化をもたらした「できた」という結果に気づけていない場合もある.特に発達領域でのICTの活用では,支援を通して対象児・者が,「できた」,「もっとやりたい」と思える体験を提供することと,またそこから自尊感情が高まることで,対象児・者自身の主体性を育むことが重要である.
ICTとはinformation and communication technologyの略語であり,インターネットやコンピュータ,スマートフォン等,情報通信に関連するデジタル技術,サービス,産業を指す.ICTは,さまざまな障害特性や機能制限によって,「できない」,「わからない」といったことを,すぐに「できる」,「わかる」ようにしてくれる.また,本来もっている能力を補助したり,拡張したりすることもできる技術である1).
また近年ではAI(人工知能)技術を活用したサービスや支援にも注目が集まっている.AIとはartificial intelligenceの略語であり,言語の理解や推論,問題解決等の知的行動を,人間に代わってコンピュータが行う技術である.作業療法の発達領域でもコミュニケーションや学習を補助する手段として,その可能性に期待が高まっている.
今回は発達領域の作業療法として,ライフステージに合わせてICTを活用した支援を紹介するとともに,AIによってどのような支援が実現されるのか,現在の技術紹介と未来の展望について触れていきたい.
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