連載 作業療法にいかすビジョントレーニング・第7回
不器用な子どもの指導をアスリートへ活かす—ビジョントレーニングと感覚運動指導のつながり
中尾 繁樹
1
1関西国際大学教育学部
pp.568-572
発行日 2019年6月15日
Published Date 2019/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201723
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不器用さとは
「不器用」とは,運動面において「動き方が鈍い,ぎこちない.運動課題の遂行が未熟である」といった場合に使用されるが,他にも認知面や対人コミュニケーションの面において,「要領が悪い.気が利かない.人付き合いが下手」等の意味で使用されることがあり,幅広い意味を含んでいる.身体的にも知的にも明らかな問題はないが,日常動作や身体運動に困難を示す人たちがいるのは確かである.しかし,どの程度から不器用といえるのかといった基準は曖昧であり,不器用かそうでないかの判断は難しい.このように,「不器用さ」についての明確な基準は定義されていないのが現状である.
「不器用さ」を訴える人は,知的能力や言葉の遅れや運動機能に影響を与える明確な要因がないにもかかわらず,粗大運動のぎこちなさや,巧緻動作の問題を抱えていることが多い.実際に教育の現場においては,「キャッチボールができない」,「なわ跳びで手と足のタイミングが合わず跳べない」といった粗大運動の問題や,「線がまっすぐに書けない」,「消しゴムで消しているうちに紙を破いてしまう」といった巧緻動作の問題がみられる.これらは視覚-運動統合・視空間認知の何らかの問題を背景とするボディイメージ(自分の身体部位の位置とそれぞれの関係,動きのイメージであり,脳で認知され,形成された自分自身の像である)の未発達や運動企画(motor plan)の未熟さがあるものと考えられる.
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