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はじめに
認知行動療法は,限られた面接時間を有効に活用することを重視する.それは面接の効果を上げるために必要なだけでなく,患者が時間を効率的に使いながら問題に対処するためのモデルを示すことにもなるからである.限られた時間を有効に使うためには,問題を整理して取り組むべき課題を明らかにする「導入パート」,課題の解決に実際に取り組む「相談・対処パート」,話し合った内容をまとめて次回につなげる「終結パート」の3つに分けることが役に立つ.
導入パートでは,気分をチェックして,前回のセッションのポイントと前回のセッション以降の生活の中で起きた重要な出来事,そしてホームワークを振り返る.ここでは個々の話に深入りしないようにして,セッションで話し合うと役に立つ問題を設定する.ここで設定した話題を認知行動療法では「アジェンダ」と呼ぶが,これはスキルではなく,患者が解決しなくてはならない心理的課題に関連した具体的な出来事である.
相談・対処パートでは,患者の心理的課題に関連した認知または行動に焦点を当てながら,アジェンダ(現実の問題)に対処するのに適したスキルを柔軟に選択する.そして,患者がそのスキルを用いながら問題に取り組むのを手助けするとともに,そこで使ったスキルについて簡単に説明(心理教育)を行う.
最後に,終結パートでは,セッション全体を振り返り,話し合った内容に関連したホームワークを決め,セッション全体に対して患者からフィードバックを取るようにする.
面接に使う時間であるが,定型的な認知行動療法の場合は一般的に45分ないしは50分とされている.しかし問題が大きくない場合や相談時間が限られている場合には,患者にそのことを伝えて短時間で面接を終えることも可能で,簡易型認知行動療法と呼ばれるアプローチも開発されている.ただ,その場合も,導入パート,相談・対処パート,終結パートを意識することによって,より効果的に面接を行うことが可能になる.そこで次に,各パートについて詳しく説明していくことにする.
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