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はじめに
2014年の道路交通法(道交法)改正の直接のきっかけとなったのは,てんかん発作による交通事故であった。2011年に栃木県鹿沼市で発生した重大交通事故の運転者はてんかんと診断されていたにもかかわらず抗てんかん薬を適切に服用せず,発作が消失していない状態,すなわち道交法第66条の運転が禁じられた状態および道交法90条の免許が与えられない状態であった。しかし,虚偽の病状申告により免許を取得し運転を続け,てんかん発作による事故を起こすに至った。これに対して,事故の遺族から,免許拒否規定が厳格に適用されるべきとの嘆願書が法務大臣へ提出され,これに応える形で,2014年に道交法改正と自動車運転死傷行為処罰法の制定が行われたのである。
道交法改正の第一点は,病状質問票への虚偽回答に対する罰則規定の導入で,これは公安委員会が運転適性のない人をより正確に把握しようというものである。第二の改正点は,てんかんの新規発症や発作再発によって運転免許取消処分を受けたが,その後の治療などで運転適性を回復した場合には免許再申請時の学科試験や技能試験が免除される規定である。これも,運転適性を失った場合の自己申告を促し,公安委員会が運転適性のない人をより正確に把握しようというものである。第三の改正点は,運転適性がないのに運転を続ける者を医師が公安委員会に届け出る制度の整備である。届け出に関して日本医師会や日本てんかん学会によるガイドラインが作成された13,14)。また,改正道交法とほぼ同時に施行された自動車運転死傷行為処罰法では,てんかん発作があり運転適性のない状態で運転し,てんかん発作による死傷事故を起こした場合には,故意の事故と判断され厳罰を科されるようになった。
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