連載 作業療法を深める ㉑腸内常在菌
“長寿菌”がいのちを守る!—大切な腸内環境コントロール
辨野 義己
1
Yoshimi Benno
1
1特定国立研究開発法人理化学研究所 辨野特別研究室
pp.972-977
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201421
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はじめに
ヒトの腸内常在菌の構成がきわめて個人差が大きいために,腸内常在菌が棲む場である大腸は,ヒトの臓器の中で最も種類の多い疾患が発症する場とされている.腸内常在菌を構成している細菌が直接腸管壁に働き,消化管の構造・機能に影響し,宿主の栄養,薬効,生理機能,老化,発がん,免疫,感染等にきわめて大きな影響を及ぼすことになる.腸内常在菌が産生した腐敗産物(アンモニア,硫化水素,アミン,フェノール,インドール等),細菌毒素,発がん物質(ニトロソ化合物等),二次胆汁酸等の有害物質は,腸管自体に直接障害を与え,発がんやさまざまな大腸疾患を発症するとともに,一部は吸収され長い間には宿主の各種内臓に障害を与え,発がん,肥満,糖尿病,肝臓障害,自己免疫病,免疫能の低下等の原因になるであろうと考えられている(図1).
さらに,先述のように腸内常在菌は,年齢や性別,生活習慣による個人差がきわめて大きい.腸内常在菌は,食物の消化・吸収だけでなく,免疫系や神経系の働きとも密接にかかわっているため,こうした個人差から有用な情報が得られれば,健康維持の手がかりとなる.
近年,ヒト腸内常在菌と生活特性(年齢,性別,BMI,食生活,運動習慣等)との関係が解明されてきた.21世紀は腸内常在菌の構造と機能が全面的に解明され,それを人類は健康診断に応用し得る時代となる.
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