特集 脳性麻痺
脳性麻痺児の歩行―痙直型両麻痺児について
島 恵
1
,
荒井 洋
2
,
宮井 一郎
3
Shima Megumi
1
1ボバース記念病院リハビリテーション部
2ボバース記念病院小児神経科
3ボバース記念病院神経リハビリテーション研究部
pp.327-334
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100070
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現在,歩行を獲得する脳性麻痺児の多くは,未熟児出生の痙直型両麻痺児である.主な原因は脳室周囲白室軟化症(PVL;periventricular leukomalacia,図1)であり,下肢優位の痙性に加えて視覚認知障害,体幹の緊張低下など特徴的な症状を呈する.治療に際しては歩行の運動力学的な側面を理解するだけではなく,発達神経学からみた病態の理解が必要である.歩行の獲得や歩容の改善には,健常児の歩行獲得の過程,さらに胎児期も含めての発達過程を知る必要がある.
運動力学から見た脳性麻痺児の歩行
1.歩行運動の異常
1)重心の移動
健常児では,重心は立脚中期に最高,踵接地期に最低となる上下方向の正弦曲線と.立脚中期が限界となる左右方向の正弦曲線とを描く.脳性麻痺児では,健常児よりも垂直軸方向に振幅が大きい(図2).重心の上下移動は重力に抗する仕事であるため,歩行運動におけるエネルギー消費量が高くなり,非効率的な歩行となる1).
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