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はじめに
脳卒中発症後,慢性期(維持期,生活期)のステージにいる対象者は,急性期や回復期よりも圧倒的に多い.慢性期のステージでは,主に日常生活活動(以下,ADL)の維持・向上に加え,生活関連動作(以下,IADL)への支援等,社会生活への参加促進が中心的に行われる時期といえる.昨今は,生活行為向上マネジメントが注目され,対象者とそのご家族への在宅生活における指導や助言を行い,潜在能力を最大限に発揮できるような支援を推進している.
脳血管疾患リハにおいては,急性期病院における早期リハが重要視され,脳卒中片麻痺者は発症当日からリハを開始することが多くなってきた.また時代の流れもあり,医療・介護連携がこれまで以上に推進され,数十年前と比べて切れ目のないリハが提供されるようになった印象を受ける.一方で,医療・介護保険制度の変革等により,充実したリハを提供できているとは言いがたい.特に医療保険領域では,標準算定日数を超えた場合には回数制限が設けられ,介護保険でも同様な制約を強いられている.
超慢性期における上肢・手へのアプローチに目を向けてみると,二次的障害の予防の観点から,衛生管理や在宅・施設でのポジショニング等が積極的に行われているであろう.この時期の上肢機能への介入をセラピストが軽視しているわけではないが,前述した通り,回数制限等の制約が重なり,ADLやIADLの自立に向けた介入が重要視されている印象である.しかし,上肢の機能には多くの重要な役割があり,どの時期でも生活の質的向上に向けた介入の余地は必ずある.
本稿では「超慢性期」における上肢機能について,対象者がどのような問題を抱え,セラピストがどのように治療を展開していくのか,医療保険領域と介護保険領域での治療介入例に基づいて紹介し,知見を加えて述べたい.
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