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はじめに
脳卒中により神経障害を来し,麻痺や後遺症のある患者の医療保険下でのリハビリテーションについては,「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合であれば,リハビリテーション算定日数上限の適用除外の対象となる(厚生労働省)」1)とされている.脳血管疾患が原因となり,介護が必要と認定された場合には,65歳未満であっても40歳以上であれば,第2号被保険者として介護保険下で訪問・通所リハビリテーション(および訪問看護7での訪問看護ステーションからの療法士の訪問)を受けることが可能である2).本邦の慢性期脳卒中者においては,上記のいずれかに該当しなければ保険下でのリハビリテーションを病院あるいは在宅で受けることが難しい(2007年3月現在).
ある地域で行われた訪問リハビリテーションの実態調査では3),療法士が行うアプローチは座位や立位に加え,歩行や移乗などの移動能力に関する割合が高い(図1).日本理学療法士協会が実施した在宅および施設の要介護高齢者を対象とした横断的調査4)では,基本的動作能力や移動能力を向上させることで,要介護度が非該当となる可能性の高いことが報告されている.身体機能を改善させるプログラムとして,筋力増強運動やバランス練習が示されているが,運動負荷強度・量・頻度を踏まえた具体的なアプローチは確立されていない.トレーニングの目的は移動能力の改善に限定されることではないが,これまでの研究成果に基づき,「医療機関で行う」および「地域(在宅)でも行える」という2つの視点から効果のあるアプローチを体系化することが,慢性期患者においては特に必要と考えられる.
本稿では,まず,慢性期脳卒中者の移動能力に対するアプローチの中で,トレッドミルやエルゴメーターなどの大型機器を用いたアプローチについて,臨床研究段階であるが応用される可能性の高い最近の知見も含めて解説する.次いで,研究方法論の統制された研究論文を紹介し,臨床における応用と問題点について考察した.最後に,先行研究の知見を踏まえて,慢性期脳卒中者に対し,日常的かつ在宅でも実施可能な移動能力に対するアプローチについて,症例を交えて述べる.
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