増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第2章 上肢・手の実用的機能向上—各手技・手法の考え方と具体的実践
2 —活動分析アプローチ:小児—中枢神経障害がある児に対して作業活動を用いた作業療法
立松 さゆり
1
,
小野 純
1
Sayuri Tatematsu
1
,
Jun Ono
1
1ボバース記念病院
pp.678-681
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200982
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はじめに
子どもは,両親の援助のもとで興味・関心の対象を模倣し,さまざまな遊びを通して,学習能力の基礎となる知覚や認知を発達させていく1).定型発達している子どもの姿勢コントロールは,抗重力運動の発達や姿勢調整反応,体性感覚の発達を導き出す.また,予測的な姿勢制御は,さまざまな活動で四肢を使うための身体の能動的な調整を提供することを助ける2).しかし,中枢神経障害がある児は,姿勢コントロールと予測的な姿勢制御を基盤とした運動経験の中で,感覚情報の効率的な入力と処理が難しく,遊びを通した知覚・認知の発達が難しい.姿勢トーンの問題(低緊張,過緊張,動揺)から姿勢・運動コントロールが未発達で,動作が定型的なパターンになる傾向がある.したがって,家庭や学校・社会生活の中で,今後の予測を立て,少しでも病的な状態が強まらないように,具体的な作業遂行能力を明確に評価し,治療を継続することが重要になる.また,セラピストだけでなく,多職種との連携を継続することが必要となる1).
今回,中枢神経障害がある児の上肢・手の機能を,作業活動の中で評価と治療の実例を挙げて報告する.患者は年長の中枢神経障害がある児である.筋や骨の成長過程で,非神経原生の筋の短縮や麻痺による拘縮でcore stabilityの活動が低下し,骨盤の選択的な運動が難しくなってきた.その結果,姿勢コントロールの崩れが体幹や四肢の効率的な動きを制限し,ADLの介助量増加につながった.
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