増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第2章 上肢・手の実用的機能向上—各手技・手法の考え方と具体的実践
3 —ボバースコンセプト:成人—脳卒中片麻痺患者の上肢・手の障害への介入
渕 雅子
1
Masako Fuchi
1
1九州栄養福祉大学
pp.682-686
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200983
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はじめに
久保田は『手と脳』1)の中で,“手で物をつかみ,にぎり,投げ,つまむ時,手の筋肉が働くので運動器官だと思われているが,その際手は外環境に直接触れて外環境の情報を集める感覚器官でもある.私たちが手を使うときこの二つの側面がうまく働き統合され,手をうまく操れる.そしてこの指令を出しているのは脳である.つまり「手は外部の脳である」”と述べている.
このように手は重要な機能と役割があるにもかかわらず,脳卒中後の片麻痺患者の上肢・手の障害は重篤である.上肢・手の機能の回復は,脳損傷の部位や程度によるところも大きいが,完全に回復することは難しいと考えられている.そのため介入に対して消極的な考え方も多い.しかし上肢・手の機能はその重要性とともに,機能の広範性に注目すべきである.手の機能回復のみに特化することなく,生活を自分で組み立て,自律した生活を送るためにも,脳卒中片麻痺患者の上肢・手への意味ある介入を常に模索したいと考える.
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