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Key Questions
Q1:地域における臨床実習の制約とは?
Q2:地域領域に求められる実習のあり方とは?
Q3:解決すべき教育的課題とは?
はじめに
一般社団法人日本作業療法士協会は,2013年(平成25年)6月に「第二次作業療法5カ年戦略(2013〜2017)」の実践計画を示し,重点的スローガンを「地域生活移行・地域生活継続支援の推進〜作業療法5・5計画〜」とした.これはOTの5割を地域に配置するという計画であり,その背景には,地域住民が自立した生活を営めるよう,医療,介護,予防,住まい,生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に代表される社会ニーズに応えるべく,職能団体としてその姿勢を表す意図があったと理解する.一定の成果があったものの,現状では医療法関連施設への就業者が75.6%(休業中と非有効データの人数を除いて算出した領域別割合)を占め〔2016年(平成28年)3月31日現在〕1),目標値とは大きく乖離した状況にあり,期中とはいえ実現には程遠い状況にある.
また,2010年(平成22年)4月30日付の厚生労働省医政局長通達(医政発0430第1号)による「作業療法の範囲」において,「理学療法士及び作業療法士法第2条第2項の『作業療法』については,同項の『手芸,工作』という文言から,『医療現場において手工芸を行わせること』といった認識が広がっている.以下に掲げる業務については,理学療法士及び作業療法士法第2条第2項の『作業療法』に含まれるものであることから,作業療法士を積極的に活用することが望まれる.①移動,食事,排泄,入浴等の日常生活活動に関するADL訓練,②家事,外出等のIADL訓練,③作業耐久性の向上,作業手順の習得,就労環境への適応等の職業関連活動の訓練,④福祉用具の使用等に関する訓練,⑤退院後の住環境への適応訓練,⑥発達障害や高次脳機能障害等に対するリハビリテーション」(抜粋以上)としている2).これらは決して病院・診療所に限定されるものではなく,むしろ地域生活移行・地域生活継続支援の中で,その技能がより発揮されるのではないか.現に,いわゆる「地域」においてOTのニーズは高まる一方である.
ところが,「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の第2条では,「臨床実習を行うのに適当な病院,診療所その他の施設を実習施設として利用し得ること」,「実習施設における臨床実習について適当な実習指導者の指導が行われること」,同指定規則の別表には,「臨床実習十八単位以上」,「実習時間の三分の二以上は病院又は診療所において行うこと」が明記されている.
職能団体として生活領域への配置を増やしていく目標や,厚生労働省による作業療法の範囲の解釈等に鑑みても,病院・診療所以外の「地域の領域」での臨床実習時間が総数の1/3未満に制約されるということに矛盾はないのだろうか.
こうした法的根拠のもとに制約された状況で,どの程度の学生が地域の現場に触れる機会があるのか定かではないが,地域の現状(その魅力も含めて)を知ることなく卒業する学生も多いのではないか.学生が就職先を検討する際には,実習中の経験も大きな要因となる.先の5カ年戦略の実現,すなわち,地域分野のOTを増やすためにも,地域領域に従事するOTに望まれる技能の習得を教育目的の一つと見定め,そのために必要な教育カリキュラムや内容を精査し,臨床実習を含む卒前教育システムの抜本的な見直しとともに,臨床実習を通じて地域作業療法の意義や魅力を啓発する環境を整備する必要があるのではないか.
本稿ではこうした課題も踏まえ,株式会社創心會(以下,弊社)での臨床実習の取り組みを紹介しつつ,地域領域の臨床実習施設が果たすべき役割と,実習生に何をもたらし得るのか,その可能性を探ってみたい.
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