増刊号 実践に役立つ! 生活行為向上マネジメント
第2章 疾患別実践例
14 —認知症例(地域)—趣味活動再開により自信を取り戻しBPSDの改善がみられた事例
常本 浩美
1
Hiromi Tsunemoto
1
1介護老人保健施設ベルローゼ
pp.873-877
発行日 2016年7月20日
Published Date 2016/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200665
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はじめに:事例紹介
後縦靱帯骨化症等により歩行困難となり,入院生活の中で認知症の進行が加わった事例である.認知症の進行に伴い,歩行困難,便失禁がみられるという喪失感がある中で,被害妄想や他の人に言いがかりをつけるといったBPSDが出現した.この事例に対して,生活行為の中の「趣味」に焦点を当て作業療法を実施し,BPSDが減少し,穏やかに趣味活動ができるようになったため報告する.
A氏は,介護老人保健施設に入所されている,80代後半の男性である.
診断名は後縦靱帯骨化症,頸椎症性脊髄症,認知症.既往歴は,広範性脊柱管狭窄症である.
介護度は要介護3,認知症高齢者の日常生活自立度はⅢaである.生活歴は,学問を大切にする家庭の中で育ち,某公立大学を卒業後,教員となった.担当教科は数学で,柔道部の顧問をした後,中学校の校長を勤め上げ,定年を迎えた.定年後は,絵画サークルに通い,個展を開いたことがある.妻と共に俳句の会にも所属し,本人は何度も賞をもらっている.
入所までの経過は,2年ほど前より転倒することが増え,徐々に歩けなくなり9カ月前に入院し,車いす生活になる.妻と二人暮らしであり,要介護状態の妻には在宅介護が困難なため,6カ月前に当施設へ入所となる.入院中からみられはじめていた被害妄想が,入所後2カ月経ったころより悪化したため,一般棟から認知症専門棟に移った.このときからOT(筆者)がかかわっている.
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