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はじめに:事例紹介
70代の男性.5年前に急性前壁心筋梗塞で左前下行枝に経皮的冠動脈形成術が施行された.手術後の経過は良好で入院による心臓リハを実施し,2週間後に自宅退院となった.退院後は自宅近くのクリニックで外来通院加療されていたが,今回の入院の3週間ほど前より下肢の浮腫と労作時の息切れが出現しはじめた.徐々に症状が増悪し,夜間呼吸困難が出現し,当院の救急外来受診し,慢性心不全の急性増悪の診断で入院となった.心不全とその増悪要因としては,陳旧性心筋梗塞に伴う低心機能と頻拍性慢性心房細動が考えられた.入院時のBNPは1,860pg/mlと高値で,左室駆出率は34%と低収縮能であった.既往は慢性心不全,慢性心房細動に加え,冠危険因子として高血圧,脂質異常症,喫煙歴(20本×30年,5年前より禁煙)がある.入院後はNPPVに加え,利尿薬やカテコールアミン系薬剤,血管拡張薬の持続静注で治療が行われた.家族歴,生活歴については妻と二人暮らしで,独立し隣町に住んでいる息子と他県に嫁いだ娘がいる.入院前は朝晩の犬の散歩と家庭菜園が主な日常的な活動であった.夫婦ともに介護保険サービスは利用していない.
入院後4病日目にリハ(作業療法,理学療法)が開始される.リハ開始時の胸部X線像は心胸郭比65.5%と心拡大を認め,両側の肺野に少量の胸水と軽度の肺うっ血を認めた.四肢の冷感はないが,足背に浮腫が残存し,鼻カヌラでの1.5l/分の酸素投与と持続点滴の減量中であったため,ベッドサイドで少量頻回の介入を基本方針として,廃用症状予防のための四肢の運動と病室内ADL(トイレ動作や整容動作)練習をPTと協調して実施した.8病日目に持続点滴,酸素療法が終了し,作業療法室での作業療法実施となった.
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