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特集 脳機能障害と作業療法—高次脳機能障害に焦点を当てて
—対応が難しい高次脳機能障害②失行—ふたたび道具が使えるようになるために
In order to regain the ability in the use of tools
能登 真一
1
,
森下 史子
2
Shinichi Noto
1
,
Fumiko Morishita
2
1新潟医療福祉大学
2済生会横浜市東部病院
pp.537-541
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200589
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Key Questions
Q1:失行の臨床症状とはどのようなものか?
Q2:失行の評価結果からADLへの影響を予測できるか?
Q3:失行に対する治療の実際とそのメカニズムに気づくことができるか?
はじめに
失行はADLに深刻な影響を及ぼす高次脳機能障害の一つである.疫学的にもその症状の出現割合は,左半球損傷患者の28〜37%1),あるいは51.3%2)という報告があるように,非常に高い.しかしながら,われわれが臨床場面で失行患者に出会うことは,たとえば同じ左半球損傷によって出現する失語や右半球損傷で出現する半側空間無視に比べて,それほど多くない印象を受ける.これは失語の合併が多いため評価を実施しにくいことや,利き手である右上肢が運動麻痺のために使用できないことが症状をとらえにくくしていると考えられる.臨床現場ではこれらのことを考慮したうえで,ADL場面の詳細な観察を含めた的確な評価を実施すべきである.失行が認められたなら,患者のADL上で困っている活動にまずは焦点を当てて直接的にアプローチをしていくのがよい.
一方,失行はその定義や分類について混乱が残ったままであるが,本稿ではSignoretら3)による行為をその目的によって分けた分類,つまり使用の目的の行為の障害である観念失行と伝達の目的の行為の障害である観念運動失行に基づいて説明する.特にADLに影響を与える観念失行に絞って,その評価と治療の実際を紹介する.
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