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特集 脳機能障害と作業療法—高次脳機能障害に焦点を当てて
—対応が難しい高次脳機能障害①半側空間無視—ADL能力向上を目指すための多面的アプローチ
Challenging therapeutic intervention for patients with left unilateral spatial neglect:multifaceted approach to improve their ADL ability
太田 久晶
1
Hisaaki Ota
1
1札幌医科大学
pp.530-536
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200588
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Key Questions
Q1:左半側空間無視症状に対する治療介入手段とは?
Q2:なぜ,病棟看護師との協働が必要なのか?
Q3:左方探索訓練を選定する基準とは?
はじめに
半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)とは,一側の大脳半球損傷後に,その反対側に注意を向けることが困難となる現象である1).右利き者の場合,右大脳半球が,空間性注意に対して優位に作用することから2),右大脳半球損傷後の左USN症状が起こりやすいことが示されている3,4).左USN症状は,その症状の改善が得られにくいことも特徴であり,複数の側面から介入を検討する必要があると考える.
まずは,直接的なかかわりを通して,可能なかぎり患者の左方へ探索できる能力を高めることである.それぞれの患者の能力に合わせた課題を提供し,それによる介入効果の日常生活への般化を目指す.また,左USN症状を呈していても日常生活動作が送れるように,生活環境の調整や手がかりを設置することが有効となる場合もある.さらに,決められた動作手順を習得することにより,左USN症状の改善を待たずとも,それによる動作のやり忘れや,やり残しを軽減できることもある.たとえば,起居動作や,移乗動作,更衣動作には,表1のような対応を取ることが可能である5).
本稿では,上記3つの治療介入手段のうち,前2者を用いた作業療法の実際について,自験例を用いて以下に紹介する.
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